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本書はトランプゲームの初期の歴史について明らかにすることを目的としている。もう少し具体的に述べると主に15世紀から17世紀前半にかけてのトランプゲームを取り上げ、どのようなルールで行われたものなのか考察する。加えてトランプゲームとその変遷の歴史について、主にゲームのシステムの視点から概観する。トランプの歴史についてカードの観点から述べた書物は多いが、ルールおよびそのシステムを軸としたものは極めて少ない。本書はそれに対する試みである。併せてそうしたゲームが当時の人々にとってどのような存在だったのかについても可能な限り考察を加えたいと思う。
(中略)
なお本書で扱うのはトランプのゲームの歴史であって、カードの歴史には触れない。実際には第1章でカードの歴史についても必要最小限触れることになるが、正直なところカードの歴史は私の興味の対象ではない。カードの歴史については欧米ではたくさんの書物が書かれているので興味のある読者はそちらをご覧頂きたい。これに対してトランプゲームの歴史に関する書物は欧米でも驚くほど少ない。それでも論文であればそれなりの数に上るので、それらの内容をまとめたのが本書である。
本書は当初一巻で完結させるつもりで書き始めたのだが、書いているうちにとても一冊では収まりきらない分量となることが判ったので数巻に分けることにした。そのうちひとまずどうにか書き上げた第1巻をここにお届けする。結果的に第1巻はトランプゲームの中でもトリックテイキングゲームと呼ばれるものの歴史、とりわけトリックテイキングの原理を支える最も重要な要素である「切り札」と「ビッド」の歴史に焦点を当てたものとなった。
(「はじめに」より抜粋)
* * *
黒宮 公彦(くろみや きみひこ): 1971 年三重県生まれ。京都大学文学部卒。学生時代に世界各地の伝統的なカードゲームに興味を持つようになり、以来ルールについて調べている。The International Playing-Card Society会員。著書に『クク大全』(合同会社ニューゲームズオーダー)がある。
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